この町おさんぽコラム13号”ねじばな”

 

この季節になると、庭や空き地にぴんとまっすぐ立つネジバナをよく目にします。十五センチほどの茎にねじのように螺旋(らせん)状に花を咲かせるので、この名がつけられています。

花は鮮やかなピンク色で、とても小さいのですが、よく見ると大変優美。蟻ほどのサイズになって、この絢爛豪華な螺旋階段を上り下りしてみたいと、私はつい夢想してしまいます。

ネジバナの別名は「捩摺(もじずり)」。かつて福島の信夫(しのぶ)という地方でつくられていた、ねじり模様の染め物の名に由来しているといわれています。

この染め物については、百人一首の「みちのくの しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに(訳・あなたが恋しくて、私の心も信夫の捩摺のように乱れています)」という歌でも触れられています。

残念ながらこの染め物の伝統はとうにすたれてしまいましたが、ネジバナの別名にいにしえの文化を感じることができます。

 

2017年5月町内会だより この町おさんぽコラム ねじばな

文・画 村山尚子

投稿:@広報部