この町おさんぽコラム21号”ロウバイ”

冬のコートを着て、この町を歩いていると、ふっと鼻をかすめる清らかな香り。

「……春が来る!」

私は犬のように鼻をくんくんとさせながら、思わず小走りになります。香りのもとをたどっていくと、そこには咲き始めたロウバイの花。透き通った黄色の花びらの向こうに明るい春の陽が少し見え、はしゃぎたい気持ちになります。

ロウバイを漢字で書くと「蝋梅」。蝋細工のような繊細で美しい花であることから、そう言われます。しかし梅の仲間ではありません。花のかたちが似ていて香りも良いので、名前に入っているのでしょう。花の咲く時期も、梅よりやや前になります。

忠生公園にはロウバイ苑があります。八十本のロウバイの中央に立つと、四方八方から漂う香りに、やはり私はまた犬のようになってしまいます。小走りになって、あっちの花をくんくん、こっちの花をくんくん。もし私にしっぽがあったら、ちぎれんばかりに振っているでしょう。

– 文・画 村山尚子 –

投稿:@広報部