この町おさんぽコラム36号” えびね”

 

 えびねの花はラン科らしく、とてもかわいらしいかたちをしていますが、小さめで、白とえび茶の色でできていて、少し地味な印象です。性格もつつましやかで、日陰の暗く土のしっとりしたところを好み、群れることはなく、互いに距離をとりながら咲きます。

 本町田にあるえびね苑を「日本一ひかえめな花畑」と私はひそかに呼んでいます。苑内は鬱蒼とした林になっていて、木々の根元に自生のえびねなどがまばらに咲いています。訪れた人たちは林の中を歩きながら、えびねを探すようにして観賞します。木陰に物静かに立つえびねにふと木漏れ日が当たると、花が優美に光ります。今年のえびね苑の開苑は四月二十日から五月六日です。

 ラベンダー畑やチューリップ畑など、花の色のあざやかさと数の多さで人々を魅了する花畑もすてきですが、えびね苑の落ち着いていて、ほっとさせてくれるかんじも私は大好きです。

 

– 文・画 村山尚子 –

投稿:@広報部