この町おさんぽコラム39号 ” アブラゼミ”

 

 夏になると都心でもアブラゼミの鳴き声は聞かれますが、自然豊かなこの町ではその数がひときわ多いように感じられます。

 飛ぶのは上手でないのか、アブラゼミが道路に落下し、ひっくり返ってじたばたしている姿をよく目にします。車にひかれたり猫にちょっかい出されたりしないよう助け起こすのは、私の夏の日課です。まず人差し指を彼らのお腹のあたりに近づけます。するとアブラゼミは六本の脚でキュッとしがみついてきます。そのまま体を起こしてあげると、「ふぅ、助かった」というように安心した様子を見せ、ひと心地つくとピュッとまた元気に空へ飛び立って行きます。

 ちなみに、お腹に発声のための弁があるのがオスで、ないのがメスです。飛び立つ前に、私は彼らに「かっこいいよ!」「かわいいよ!」とポジティブな声かけをします。成虫になってから二週間の残り時間を、少しでも自信を持って生き生きと過ごしてほしいと願うからです。

– 文・画 村山尚子 –

投稿:@広報部