この町おさんぽコラム43号 ” 雪虫”

 
十一月下旬のある一日に、粉雪のようなものがいっせいに宙をふわふわと飛びます。住宅街でも商店街でも見られます。それをすくうようにして優しく手に乗せると、体に白い綿のようなものをまとった小さな虫であることがわかります。羽のあるアブラムシの一種で、雪虫または綿虫と呼ばれています。井上靖の小説のタイトル『しろばんば』もこの虫をさします。
彼らは風のない穏やかな日を選び、春夏を過ごした木から、冬用の木に引っ越しをしているのです。ちなみに、この綿のようなものは何かというと、雪虫のおしっこは甘いので、それが体にくっついてべたべたしないよう、水をはじくロウソクのロウに似た素材のものをあらかじめまとっているのです。非常に用意のいい虫たちです。 
雪国では雪虫が飛ぶと初雪が降るといわれます。雪のあまり降らないこのあたりでも、私の統計によれば、その数日後にぐっと冷え込みます。

– 文・画 村山尚子 –

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