要石1
今月号から「要石」(かなめいし)というタイトルで、防災に関する情報コーナーを新設しました。
昨年10月の防災アンケートには、「避難施設(避難所)でのコロナ対策はどうなっているのか?」という質問が数多く寄せられています。
そこで、今回の「要石」では、都の感染症対策ガイドライン、町田市の感染防止対策マニュアル、昨年行われた開設訓練などをもとに、町田市が考えている避難施設での感染防止対策を説明すると共に、問題点や課題についてもふれていきます。
町田市は、東京都の「避難所における新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」(2020年6月発行)を受け2020年8月に「町田市避難施設感染防止対策マニュアル」(本文では「対策マニュアル」と称します。)を公表し、町田市内の自主防災組織の代表者向けに説明会を実施しています。更に、町田市内の各避難施設(「指定避難所」に指定されている小学校や中学校など)で「対策マニュアル」に基づく開設訓練を町田市避難施設指定職員、施設管理者・職員(学校関係者)、関係する地域の自主防災組織が一緒になって実施しています。
コロナ禍以前も、インフルエンザや感染性胃腸炎(ノロウイルスなど)などの感染症対策として、感染者をスクリーニングし隔離するという対応をマニュアル化している避難施設もあります。コロナ禍以前以後で大きく変わった点は、スクリーニング対応の強化、避難施設内の居住スペースの考え方などです。
【感染者のスクリーニング強化】
「対策マニュアル」では、避難施設への入所受付の前に、事前受付(都のガイドラインでは検温・問診所)が設置され、感染の疑いのある方・濃厚接触者・コロナ感染症の自宅療養者と一般者を、検温と問診によって振り分けます。この振り分け(スクリーニング)を避難施設指定職員が担当します。指定職員はガウン、ゴーグル、マスク、手袋で防護します。入所希望者は事前受付で手指消毒後支給されたマスクを着用し、問診にのぞみます。事前受付では、「感染症の自宅療養者」、「濃厚接触者」、「咳・発熱など感染の疑いのある体調不良者」、「一般者」に振り分けられます。
【動線の分離】
振り分け後、一般者は入所受付へ、それ以外は、それぞれの専用スペースに誘導されます。振り分け後の移動経路(動線)は、それぞれが交差しないように分離されています。
【ゾーニング】
専用スペースは、「自宅療養者」用、「濃厚接触者」用、「体調不良者」用、「体調不良者の家族」用の各ゾーンに分けられます。。各ゾーンには専用トイレも用意されています。
更に、各ゾーンの居住スペースには、一人一人、専用の屋内テント(4㎡)が用意されています。専用スペースでは、定期的に換気や消毒が行われます。また、専用スペースでの対応は、すべて指定職員が行います。
専用スペース近傍は、一般者の立ち入りが禁止されています。
【居住スペースの見直し】
居住スペースでの感染防止対策の一環として、人と人とのフィジカル・ディスタンス確保のため一人当たりの居住面積の見直しが行われました。見直し前の1.65㎡/人から2m×2m(4㎡)/人へ拡張されました。ただし、間仕切りやテントを使った場合は、家族(2~3人まで)単位で使用することもできます。市はこの対応のため、50張の屋内用テント:2m×2m(4㎡)を用意しました。
【その他の感染防止対策】
一般者の居住スペースにおいても、定期的な換気や共用箇所の消毒が行われます。更に、一般者の体調不良も把握できるような体制が整えられます。
【「対策マニュアル」やその対応についての問題点・課題】
- 一人当たりの居住面積が拡張された結果、避難施設の収容人数が大幅に減少しました。このため、多くの避難施設で町田市が想定する避難者数を収容しきれないという問題があります。
- 新型コロナ感染症では、無症状者からの感染が問題になっています。事前受付では、検温と問診でスクリーニングする為、無症状者を発見できません。その為、一般者の居住スペースでクラスターが発生する可能性があります。
町田市避難施設感染防止対策マニュアル(下記のURLをクリックする、町田市の対策マニュアルのページにが表示されます。)
https://www.city.machida.tokyo.jp/kurashi/bouhan/bousai/infect-prevention-manual.html
(注)「要石」命名の由来:「要石」(かなめいし)とは、茨城県の鹿島神宮の境内などにある石。根は深く、地震を鎮めると云われています(日本国語大辞典より)。また、江戸時代の地震関係の文献に浅井了意が著した「かなめいし」三巻があります。