要石NO.6
今回は、玉川学園町内会と当地域の8つの地区自主防災隊の関係についてお話しいたします。
【自主防災組織の歴史】
当地域の8つの地区自主防災隊(以下、地区自主防災隊と称す)は災害対策基本法で定められた自主防災組織です。伊勢湾台風の被害を受けて昭和36年11月に災害対策基本法が制定されました。この法律のもとで防災基本計画が策定され、その中で被災者救援を効率化するため行政への協力組織の一として「自主防災組織」が記述されています。
昭和50年代に入り東海地震説(昭和51年)の発表、宮崎県沖地震(昭和53年)などを受けて、全国に自主防災組織の結成が進みました。平成7年の阪神淡路大震災を受けて、災害対策基本法の改正で、初めて「自主防災組織」の育成が行政の責務の一つとして明記されたました(消防庁発行の自主防災組織の手引より)。
このころから「自助、共助、公助」の必要性が呼び掛けられるようになり、共助の担い手として自主防災組織の必要性が求められています。
【地区自主防災隊の誕生】
町田市は昭和54年頃に自主防災組織づくりを町内会・自治会に呼び掛けています。玉川学園町内会(以下、町内会と称す)もこの要請を受けて、町内会を母体とするひとつの自主防災組織を編成しています。当時から町内会は3700世帯という大型の組織でした。町内会にひとつの自主防災隊では細かな活動も困難だという理由で、平成5年に地域密着型の自主防災隊を目指して8つの地区に分割して、8つの自主防災隊を連合させて機動性のある「玉川学園自主防災連合体」として再編成しています(玉川学園町内会発行の「我が町玉川学園地域80年のあゆみ」より)。この連合体には、生みの親である町内会もかかわっています。
【防災委員会の役割】
先ほどの資料によれば、年度初めに防災委員会を開催し、町内会役員と防災委員によって自主防災隊の役員(隊長、班長)を選出しています。当初は町内会役員(幹事)の中から隊長を選出し、防災委員から班長を選出していました。このように防災委員会の役割は、年度初めに役員を決めることにありました。防災委員会は、総勢60名前後の大所帯であるため、その場で諸問題や課題を討議することは困難で、現実的ではありませんでした。
【自主防災隊長会議の役割】
そこで「玉川学園自主防災連合体」としての機能を実現するために、町内会の役員と8つの自主防災隊の長を集めて自主防災隊長会議が開催されています。町内会に残っている記録を見ると年間6回から8回開催されていました。自主防災隊長会議の場で主な防災活動が決められています。例えば、総合防災訓練や防災訓練、隊長会議主催の班長研修、防災倉庫の設置や防災資機材の購入計画など多岐にわたっています。
【問題点や課題に対する取り組み】
《役員の選任や任期など》
当時は幹事の任期が2年で最長4年までとされていたため隊長も最長4年で交代することになり、更に、班長(情報班長、消火班長、救出救護班長など)に就任する防災委員の大多数が1年で交代するので、自主防災隊の継承性やスキル向上につながらないという問題を抱えていました。
その対策として、隊長となった幹事が幹事退任後も隊長を継続できるようにしたり、その年の防災委員ではない隊長経験者や班長経験者などから意欲のある方を副隊長や班長にしたりと地区自主防災隊の組織改革が進んでいます。
更に、地区自主防災隊の自立や強化のため、防災委員会で自主防災隊の役員を決めることをやめ、地区自主防災隊の下で役員を決めるようになりました。その要因としては、防災活動の経験者が増えたこと、各地で防災協力員や防災サポーターなどの制度が作られたことなどで地区自主防災隊が独自に役員候補を獲得できるようになったことがあげられます。これによって、防災委員会は、当初の役割を終えたことになります。
《隊員の要件》
以前から町内会の会員が自主防災隊の隊員であり、その中から、自主防災隊の役員を選任するという決まりがありました。つまり町内会の会員以外の方は自主防災隊の役員にはなれない。この点は、町内会や地区自主防災隊側にのみ問題があるのではないように思えます。町田市の自主防災組織に対する補助金申請では、自主防災隊の母体である町内会・自治会の会員数を報告して補助金額が算定されます。この補助金申請は、補助金の授受だけでなく、自主防災組織と町田市とを結びつける糸口にもなっています。
現在、いくつかの地区では町内会の会員以外でも自主防災隊の隊員になれるようにルールを変えています。更に、町田市に対しても補助金算定方法の見直しを求めてまいります。
【地区自主防災隊への支援】
町内会が毎年掲げる事業計画・方針と活動の進め方の一つに「防災意識の高揚をはかり、自主防災隊の活動を推進し、災害に強いまちづくりをめざします」という文言があります。この文言の解釈はいくつかあると思われますが、町内会の活動実態に沿ってみると、「防災の主たる実行部隊は地区自主防災隊であり、町内会はその活動を支援します」となります。
《人的支援》
「町内会が町内会の支部ごとに防災委員を選任して、その防災委員を地区自主防災隊で活動させる」このやり方は、昔から変わっていません。防災委員会をなくしても防災委員制度を残す理由は、地区自主防災隊の人員確保のためです。受け入れ側の地区自主防災隊も大方は、この点を歓迎しています。
《活動資金の支援》
2018年までは、地区自主防災隊の活動資金は町田市の補助金(16,000円+地区会員数×100円)だけでした(高額な資機材は町内会負担)。
2017年頃から地区自主防災隊の強化が呼び掛けられ、地区自主防災隊の活動が活発になります。その結果、町田市の補助金だけでは不足する地区が出てきました。そこで、2019年以降、町内会から地区自主防災隊に支援金(年100,000円)を支出するようになりました。資機材や消耗品の購入だけでなく、訓練や講話などの開催(会場使用料、チラシの作成など)や日々の活動に供するための資金提供です。
《防災資機材購入への支援》
先ほどの支援金や防災倉庫の新設費用、高額な防災資機材の購入費用は、会員の皆様からいただいている会費ではなく、町内会が行っている資源回収事業の収益金から拠出しています。
【後記】
先人が残した資料や聞き取り及び自身の体験(10年間)から本文を構成しました。現在進行している「防災計画」作成や防災計画遂行のための予算措置については改めて、記載する予定です。