要石 No.2

今回の話題は、安否確認です。阪神淡路大震災や東日本大震災などの教訓から発災直後の一刻を争う状況では、公的機関などによる支援は間に合わず、地域住民による共助が最も重要であると理解されています。

発災直後に身の安全が確保でき周囲の安全が確認出来たら次に行う行動が安否確認です。家屋や塀などの倒壊や家具などの転倒・落下・移動などで被災した方の救出は、時間との勝負です。救出までの時間が長いと、圧迫死の恐れや助け出されてもクラッシュ症候群(脚や腕などが圧迫され続けることが原因で発症し、圧迫時間が1時間で発症した例もある)で死に至る可能性があります。素早い救出を実現するためには、迅速な安否確認が必要となります。
ご家庭で在宅家族の安全を確認したら白いタオルを門口に掲げ「我が家は無事」を知らせする「白いタオル出し」は、安否確認の迅速化を目指したものになっています。
【現状把握】
2020年の防災アンケートでは、「震災時にあなたの安否を確認してもらえる方はいますか?」という問いに対し、6.3%の世帯が「いない」という回答でした。大震災では、通信の途絶などで、家族同士で連絡がつかない事態が発生します。安否を確認してもらえるのは家族のみで、かつ、日中に家族が通勤や通学で不在となった場合(日中独居)、安否を確認してもらえない可能性があります。そのような世帯が67.8%もありました。先ほどの「安否を確認してもらえる方がいない」を合わせると、74.1%の世帯が「安否確認に不安が残る」という結果になりました。更に、安否確認に不安が残り、かつ、家具等の転倒防止が不十分と答えた世帯は、全体で24.3%となりました。このままでは、この地域の4世帯に1世帯の割合で、家具の転倒・落下・移動などで身動きがとれなくなり、安否確認もされずに閉じ込められる可能性があります。また、高齢者に限らず、地震による大きな揺れで転倒し、意識を失ったり骨折や打ち身などで動けなくなったりする方もいます。更に、自ら避難することが困難な方や状況把握が困難な方がいます。町田市では要配慮者の内、避難行動が困難な方を避難行動要支援者と呼んでいます。要配慮者とは、高齢者、障がい者、妊婦、乳幼児など、特に配慮が必要な方です。
また、地震で多発する火災は延焼する可能性が高く、避難広場などの安全な場所への避難が急がれます。取り残された方がいないか、迅速かつ的確な安否確認が必要になります。
【課題】
日中独居者や要配慮者は、被災する可能性が高く、被災した場合、助けを呼ぶことが困難です。日中独居が増える時間帯は、地域の人口が大幅に減少する時間帯でもあり、安否確認や救出の為の人員が不足し安否確認に時間がかかる恐れがあります。更に、要配慮者情報が周知されていない状況では、見逃しも起きる可能性があります。
要配慮者の把握を平常時から行っておいて、発災時に役立てるという戦略が防災・減災につながります。
町田市では、「手上げ方式」と称して、自主防災組織や町内会・自治会による独自の調査により要配慮者情報を把握することを推奨しています。町田市の「手上げ方式」は、地域住民が必要に応じて要配慮者登録申込書(仮称)に氏名、住所、生年月日、個人の状況(障がいや介護の状況、など)、家族構成、普段いる部屋や寝室の位置、緊急連絡先などを記載し、地域の自主防災組織や町内会・自治会に届けるものです。この方式では、申込書を受け取る側で個人情報を適切に管理するとしても、一部の人に、その内容が見られてしまう為、地域住民と受け取る側との信頼関係が無ければうまくいきません。町田市内で、この方式を採用している団体では、申し込み率は多くても3,4割ほどです。
【解決策の例】
一方、「手上げ方式」に工夫を施し、申し込み率を8割以上に上げている自治会があります。その方式は、町田市が提案している要配慮者登録申込書に相当するものを封筒に入れて封印して自治会に預け、大震災が発生したときにのみ封筒を破り、安否確認に役立てるというものです。また、対象を要配慮者に限らず一般の世帯にまで拡大して安否確認の精度を上げています。更に、年に一度、内容更新の為に返却しますが、この時、返却された封筒の封印を確認できるので安心です。