要石No.8 アウトドアアウトドア防災・宿泊体験記
9月9日、町田市主催のアウトドア防災・宿泊体験に参加した。会場は町田第五小学校。前日の台風接近で当日の朝方まで雨がぱらつき開催が危ぶまれたが、アウトドア防災が始まるころには、グラウンドの状態はテントも張れるほどに回復した。
宿泊体験参加者は、スタッフを除いて31人(内、子ども10人)であった。
【アウトドア防災】
町田市には洪水・土砂災害時の避難施設と震災時の避難施設が用意されている。その中に想定避難者数が収容能力を上回る避難施設がある。町田第五小学校の避難施設もその一つである。玉川学園町内会は、2018年以降、市長と語る会や市政懇談会などで、この問題を解決するよう町田市に申し入れてきた。
町田市は、町田市地域防災計画2023年度修正方針(案)の中で屋外用避難テントの整備を掲げている。前年度に屋外用避難テントを900張りほど購入して実施に向けた取り組みを始めている(屋外型避難用テント購入費 18,956千円)。
今回の「アウトドア防災」開催の目的には、避難施設としてのテント活用の啓発と実証実験が含まれている。
【屋外テント】
早めに来ていたので、展示用の屋外テントを設営しているところを見物していた。テントを張っている方にいろいろ質問していると、このテントは2016年4月に発生した熊本地震の際に登山家である野口健さんの呼びかけで避難者が寝泊まりするテント村がつくられ、その時使用したSnowPeak製のテントと同じサイズ同じメーカーのものだという。6年ほど前に野口健さんの著書《震災が起きた後で死なないために-「避難所にテント村」という選択肢-》を読んでテント村に強い関心を抱いていた。テントの大きさが小ぶりなので疑問に思い、その方に、岡山県総社市が支援のため熊本地震の被災地に送ったテントかと問うたら、総社市が送ったテントでは足りずSnowPeak社から支援を受けたテントの方だという。展示されていたSnowPeak製テントは、町田市が災害用に購入し今回の宿泊体験に使用した屋外テントとほぼ同じサイズだった。野口健さんは、その著書の中でテント村の発想は、欧米の登山隊が使うベースキャンプから来ていると述べている。また、2012年にイタリアの被災地を視察したときに、「テントが避難所になっている」、「テントは大型で、一張に5,6人ずつ、下にはカーペットが敷かれ、その上に簡易ベッドが並べて置かれている」。このようなスタイルの避難所は「他のヨーロッパの国でも同じだ」という。また、使われているテントは天井が2mもある大型のもので歩き回るときに背をかがめる必要はない。
残念ながら、町田市の災害用テントは、イタリアのテントよりかなり小さい。
【宿泊体験】
宿泊体験に使うテントは、参加者自ら設営することになっていた。町田市のテントには、風雨からテント本体を守ると同時に出入り口前に日陰の空間を作ることができるタープが付属している。まず、テントの設営場所と向きを決めることにした。グラウンドは比較的平らなので、決められたエリアならどこに張っても良いがテントの出入り口の向きは風下にしないと強風が吹いたときに、出入り口から入った風でテントが舞い上がることがある。
さて、テント本体は簡単に開いた。私も失敗したのだが、このテントは窓が1つで、テント内から見て出入り口に向かって左側に窓が付いている。タープもその窓の位置に合わせたところにジッパー付きの開口部があるので。向きを合わせないとやり直しになる。テントを張り直しているときに、タープの向きに気を付けてと触れ回る声が聞こえてきた。
テントやタープは支柱とロープとペグを使って地面に固定する。細いロープがテントの周りに張りめぐらされ、気を付けないと足を引っかけて転倒する。更に、日没後も活動が続くので、安全の為に、テントの周りにはランタンが置いてあった。
【夕食づくり】
バルーン投光器の明かりのもとで夕食の準備が始まった。持ってきた米を調理袋に入れ適量の水を入れ、沸騰しているお湯で湯煎するのだ。これだけでご飯ができる。湯煎専用の調理袋は、100円ショップでも販売されている。
調理袋による湯煎では、鍋の底などに袋が密着すると袋が溶けることがあり底に皿を置くなどの工夫が必要だという。副食も調理袋を使った湯煎料理だ。野菜などの生の具材は、熱の通りをよくするため、サイコロ大に切るよう指示があった。刻んだ野菜とソーセージ代わりの鶏ササミ(缶詰)と固形のコンソメ1個を調理袋に入れ、適当な量の水を入れ30分ほど湯煎し、ポトフを作った。ポトフはうまくいった。米飯は、芯が残り、失敗か。水の量が足りなかったようだ。
【お楽しみ】
19時から20時まで出張カフェも店開きし、食後のコーヒーを楽しんだ。
【就寝の準備】
就寝前に寝床づくりをはじめようとテントに入った、グラウンドが平らだといっても多少の凹凸がある。床に座っているとテントの底の薄い布地を通して、地面のでこぼこを感じる。長期にわたる避難生活を思うと、このでこぼこ感は解消しないとまずいと感じた。また、冬場は地面からの冷気を防ぐ必要がある。やはり、テントの床に敷く厚手のカーペットは必要だ。
【21時消灯でバルーン投光器を停止】
テントの中に入りエアマットに横になる、エアマットに腕などが直に触れると張り付くようだ。汗をかいている状態だと、かなり不快に感じる。更に、エアマットの一部を丸めて、枕にするが、頭を動かすたびにほどけてしまう。そこで、枕の部分を固定するために毛布をかぶせて寝た。前もって丸めた枕部分をテープで固定することをお勧めする。
ところで、エアマットの空気入れは労力のいる作業だ。用意されている手押しポンプは使いにくい。エアマットの吸入口とポンプの先端をしっかり押さえていないと空気が入っていかない。電池駆動のポンプが防災倉庫にあったら助かるだろう。
さて、就寝後の様子だが、近所のテントの会話がよく聞こえる。寝静まるまでは眠れそうにない。
早朝、寒さのせいで目を覚ました。毛布を掛け直し、目をつむるがなかなか寝付けない。
朝食は、防災倉庫に備蓄されているものと同じビスケットだ。テントの畳み方などを教えてもらい。テントの撤収作業を進めた。タープの表面は夜露に濡れ、たくさんの水滴がついている。従って、タープは外したままにし、乾くまで畳めない。ペグは残ると危険なので本数を数えながら抜いていく。
【おわりに】
今回のような屋外テントによる実証実験を季節を変えて実施し、問題点を洗い出し、対策を講じる必要を感じた。
この取り組みを実施していただいた防災課の職員および減災ラボと減災ガールズの方々に、お礼申し上げる。