この町おさんぽコラム23号”すみれ”

  道路や石塀の割れ目から、すみれがちょこんと顔をのぞかせていると、「かわいらしいあなたがなぜこんなところに!?」と思わず問いかけたくなります。 すみれは花を咲き終えると実をつけます。実は熟すと中に詰まっている種をはじき飛ばしますが、その距離はせいぜい3m。そこに蟻がやって来て、種を運び始めます。というのも、すみれの種には蟻の大好物である白いゼリーのようなものが添えられているから。その道すがら、ゼリーが種からぽろっとはずれると、蟻はゼリーだけを巣に持ち帰り、種をその場に置いておくのです。やがて春になり、種はそこに根を下ろします。すみれが思わぬところで花を咲かせるのには、そういう経緯がありました。 ごちそうをもらってうれしい蟻と種を遠くに運んでもらって助かっているすみれ。知らず知らずのうちに、両者は支え合って生きています。

この町おさんぽコラム 23号 すみれ

– 文・画 村上尚子 –

投稿:@広報部